防災グッズのリストに、よく「カセットコンロ」「ガスボンベ」と記載されているのを見かけます。
定番!とか必須!といわれている防災グッズの中でも、実はわが家にとっては必要のないグッズもあります。
この記事では、カセットコンロを防災グッズとして常備する理由と、防災にカセットコンロはどういったシーンで必要なのかどうかを解説します。
この記事を読むと以下のことがわかります。
この記事でわかること
・防災にカセットコンロは必要か?
・どんなときにカセットコンロを使うのか。避難所でも使えるのか?
・カセットコンロのメリットデメリット
・ガスボンベの必要本数
防災グッズにカセットコンロは必要?不要?
結論から言うと、個人的には
防災グッズとして、カセットコンロを準備しておくことを強く推奨します。
大災害が発生すると、電気、水道、ガスといったライフラインは、大災害発生直後は停止し利用できなくなります。これらが当たり前に使える毎日を暮らしている現代の私たちは、自分で火を起こして煮炊きをすることに慣れている人は、多くないですよね。
電気やガスから独立した道具がないと、料理どころかお湯を沸かすこともできません。
しかしカセットコンロがあれば、パウチのレトルト食品を温めたり、アルファ化米のパウチにお湯を注ぎ、15分ほど待てば美味しいごはんを食べることができます。
また、赤ちゃんや小さい子ども、障害のある家族や要介護の家族、ペットがいるなどの事情で、なるべく在宅避難したい、という人は、ぜひカセットコンロを備えておくことをおすすめします。
①ガスの復旧は最も遅い
1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災では、電気→水道→ガスの順番で復旧しました。特にガスは、阪神大震災では61日、東日本大震災では34日かかったと言われています。
さらに、首都直下地震等による東京の被害想定によると、各ライフラインの復旧日数の目安は、電気で3日、上水道で6日(下水道はそれ以上かかる)、ガス(都市ガス)で60日となっています。
これらを見ると、電気が最初に復旧し、次いで水道、最後にガス(都市ガス)復旧するという順番になっていることがわかります。ガスを利用している家庭では、調理ができなくなるのはもちろん、ガスを使用する暖房器具が使えず、お風呂も沸かせなくなります。
参照:NHK防災・復興 明日をまもるナビ「首都直下地震 復旧にかかる日数は?」
備蓄品はこれが必要(知る防災) - 日本気象協会 tenki.jp
②災害時におけるカセットコンロのメリット
災害時において、カセットコンロがあるメリットは以下の通りです。
- ガス・電気が止まっても使うことができる
- 屋内でも使える
- 火を起こす・火の始末が簡単
- 冷蔵庫・冷凍庫にある食材を調理して食べることができる
- 温かいものを食べられる
- 顔や体を温かいタオルで拭くことができる
- 哺乳瓶、調理道具などを煮沸・熱湯消毒できる
ガス・電気が止まっても使うことができる
一番のメリットはこれです。ライフライン復旧まで温かい食事をとったり、生活面でも大変重宝します。
屋内でも使える
例えばバーベキューの焚火やかまど、バーベキューコンロ、炭を使う七輪は、屋外で使えても屋内で使うことはできません。ただし、屋内でカセットコンロを使うときも、カーテンやストーブの側では使わないことや、換気に気をつけるなど、注意することがあります。
火を起こす・火の始末が簡単
アウトドアの経験がほとんどない人をはじめ、慣れていない人にとって火を起こすことすら至難の業です。ですがカセットコンロは、慣れていない人でも使い始めから片付けまで簡単で安全に使えます。
冷蔵庫・冷凍庫にある食材を調理して食べることができる
災害発生後、電気・ガス・水道が止まった中でどのような食事をとるかというと、
「冷蔵庫の食材」→「冷凍庫の食材」→「常温保存している食材」→「長期保存の非常食」の順番がおすすめです。
停電で冷蔵庫が稼働しなくなり、傷みやすいものから食べていくのです。
私たちは毎日、肉・魚・野菜を調理するときは、なんの不自由もなくキッチンで料理していますよね。
もしもカセットコンロがなければ、冷蔵庫・冷凍庫にある食材のうち、加熱しなくても食べられる食材や商品ばかりになってしまいます。せっかく冷蔵庫に残っていた肉や野菜も、生で食べられないものは、痛んで破棄ということになるのはもったいないですよね。
非常食も温めることができる
非常食として、お湯が必要になる食品を用意している人も多いと思います。
カセットコンロがあればお湯を沸かすことができますので、非常時でもカップラーメンやスープ、アルファ米(待ち時間は長いですが水でも作れる)など温かいものを食べることができます。災害時は温かいものを口にするだけでも、精神的な安定につながります。
顔や体を温かいタオルで拭くことができる
災害時にライフラインが止まると、お風呂に入ることができなくなります。そんな時に体を清潔に保つには、身体を濡れタオルや汗拭きシートなどで拭くことが挙げられます。もしカセットコンロがあれば。お湯を沸かして温かいタオルをつくることができますね。
哺乳瓶、調理道具などを煮沸・熱湯消毒できる
赤ちゃんがいる家庭は、災害時は不便を感じることが特にあるかと思います。例えばミルクの哺乳瓶。使い捨ての哺乳瓶や、紙コップなどでミルクを飲ませることもできますが、もしカセットコンロでお湯を沸かすことができたら、煮沸・熱湯消毒することができます。
赤ちゃんがいる家庭以外でも、災害時は調理器具を清潔に保つにはなかなか難しいことがあります。そんなときに、同様に煮沸消毒することができますね。
③災害時でのカセットコンロのデメリット
一方で、デメリットも考えてみましょう。
- カセットコンロやガスボンベによる事故
- ガスボンベの備蓄や管理も必要
- 気温が低いと火が付きにくいことがある
- コンロは約10年で寿命を迎える
カセットコンロやガスボンベによる事故
一方で、カセットコンロやガスボンベによる事故も起きています。事故の多くは、誤った使用方法によりボンベが破裂したことが原因です。コンロやボンベの破裂や火災、事故の危険を避けるために、正しい使用方法を守りましょう。
ガスボンベの備蓄や管理も必要
カセットコンロを準備しただけでは、使うことはできません。燃料となるガスボンベが必要です。一般的には1日1本使うと言われ、最低3日分、準備できるなら1週間分の本数を備蓄しておきたいところです。個人的には、1日2本の計算で備蓄するのがオススメです。
詳しくは、こちらで説明しています
本数の確保以外にも、管理上の注意点です。
・直射日光が当たらない・40℃以下・近くに火気がない・湿気の少ない場所に保管する
・子どもやペットが触らないよう保管場所に注意する
・ボンベの使用期限をチェックし、使いながら使った分を補充して備蓄する
気温が低いと火が付きにくいことがある
カセットボンベのガスは、普通の室内なら問題なく使えますが、冬季で暖房が使えない状態だと、室内でも火がつきにくくなってしまうことがあります。 冬の気温が0℃、もしくは氷点下になる可能性がある場合は、低温の環境に対応できるカセットボンベを選ぶことも視野に入れましょう。
コンロ本体は約10年で交換する
カセットコンロは、使用頻度に関わらず、製造日から10年を目途に処分することが薦められています。
災害時、カセットコンロはどんな状況で使う?
①カセットコンロは避難所でも使える?
カセットコンロは、主に自宅の安全が確認できた上で「在宅避難をする」状況で使う想定です。
災害時にカセットコンロがあることでとても助かりますが、避難所では使えないことも多いです。基本的には『在宅避難用の防災用品』と考えると良いでしょう。
避難所でカセットコンロを使えない理由は以下の通りです。
・人が多い場所、人の通行のある場所で使うのは危ない
・体育館や公民館等で個人的に調理可能なスペースはほぼない
・室内での火気使用を禁止される場合がある
・避難所の敷地内では、駐車場などの屋外であっても火気の使用を禁止されたり制限される場合がある
たとえ屋外で使えたとしても、雨が降ったり風が吹いたりしていると、火がつきにくくなります。
また、限られた少量の食事、冷えている食事を分け合って食べる人たちがいる中で、自分の家族だけ温かい食事をとっていると、他の避難者との間でトラブルになる可能性もあります。決して悪いことではありませんが、共同生活のなかでトラブルになることは少しでも避けたいものです。
よって、避難所では使用はできない・または控えておくのが良いと考えておきましょう。
②カセットコンロが活躍する場面
災害時にカセットコンロが活躍するのは、自宅の安全が確保された上で「在宅避難をする場合」です。
在宅避難をしながらも、ガス・電気などのライフラインが停止している場合、食事をつくったりお湯を沸かしたりするのにカセットコンロが活躍します。
もしも、自宅でライフラインの復旧を待つと決めたものの、カセットコンロがなければ、例えば以下の方法で熱源を得ることになります。
・ガスバーナーや焚き火台などのキャンプグッズで料理
・自作のウッドストーブで料理
・自力でかまどを作り、火起こしする
うーん、アウトドアやサバイバル未経験者には結構ハードルが高いです・・・。
更に屋外で料理することになると、天候にも左右されます。また災害時で余震が発生したり強い風が吹いたりすると、家屋のがれき等に燃え移ったりしたら二次災害にも繋がります。
よって、カセットコンロとガスボンベを用意しておくことで、すこしでも危険を減らすことができます。
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災害時にカセットコンロを購入・使用するときの注意点
①カセットコンロの事故!うっかりやりそうな事例
そう思っているあなた、もしかしたら自分のうっかりが、大きな事故に繋がりかねません。
カセットコンロは災害用だけではなく、もちろん毎日の生活でも使われています。特に秋から冬の寒い時期には、お鍋などをするために使用頻度があがります。間違った使い方で事故を起こさないよう、過去の事故事例を見てみましょう。
(1)2022年12月 飲食店の鉄板の上でカセットコンロを使用。ガスボンベが破裂(兵庫県)
飲食店にてカセットコンロ用のガスボンベが破裂した事故。テーブル席にいた客1名が意識不明の重体となり、病院に搬送されたが、3日後に死亡した。
警察と消防の調べでは、飲食店の鉄板でお好み焼きを焼いて食べた後、鉄板の上に設置したカセットコンロで焼肉を食べていた。前に使用した鉄板の温度が十分下がっていないうちにカセットコンロを置いて使用したため、ガスボンベが加熱されて破裂した可能性がある。
(2)2022年12月 カセットコンロをIH調理器の上に置いてガスボンベが破裂(福岡)
木造アパートの2階の部屋でカセットコンロ用ガスボンベが破裂。同室の住人2名が負傷。他の部屋への延焼などはなかった。警察と消防の調べでは、負傷した2名はカセットコンロで鍋をし、使用後のカセットコンロをIH調理器の上に置いた。何らかの原因でIH調理器の電源が入り、カセットコンロのガスボンベが熱せられて破裂した可能性がある。
(3)平成20年9月 カセットコンロを2台並べて鉄板を乗せて使用(東京)
東京都内の高等学校の文化祭において、カセットコンロ2台の上に鉄板を置き、焼きそばを調理中に、カセットボンベが過熱され爆発した。この事故で、15人が負傷し、うち男子生徒2人が重症、男子生徒3人、女子生徒1人が中等症と診断された。
参照:
②カセットコンロ・カセットボンベの安全な使い方
普段カセットコンロに慣れていない人が、災害時に急に使おうとしても、うっかりやってしまいそうな行動で大きな事故に繋がる可能性もあります。カセットコンロとガスボンベを安全に使うには、どのようなことに注意したらよいのでしょうか。
(1)IH調理器の上で使用しない
カセットコンロをIH調理器の上で使用、あるいは保管しない。
IH調理器の電源が間違って入ってしまった場合、カセットボンベが過熱し、爆発することがある。
(2)大きな鍋で調理しない
コンロを覆うほどの大きな鍋などの調理器具は使用しない。熱がこもりやすくなり、カセットボンベが過熱し、爆発することがある。
(3)カセットコンロに指定されてるボンベを使用する
必ずご使用のカセットコンロ専用のガスボンベを使用する。ガスもれや火災の原因になるため、安い・在庫が残っているなどの理由でその他のガスボンベは使用しない。
(4)石綿やセラミック付きの魚焼き器を使用しない
石綿やセラミック付魚焼き器や焼き網、陶板プレートなどの蓄熱性のあるものは使用しない。カセットボンベが過熱し、爆発などの恐れがある。
(5)2台以上並べて使用しない
カセットコンロを2台以上並べて使用しない。熱がこもりやすくなり、ガスボンベが過熱、爆発することがある。
(6)ボンベは表示どおり正しくセットする
カセットボンベの切込み凹部をカセットコンロのボンベ受けガイド凸部に合わせてセットする。誤った装着はガス漏れや火災につながる。
(7)テントや車内で使用しない
テント内ではカセットコンロを使用しない。テントや車内などで使用すると、一酸化炭素中毒や酸欠になる場合があり危険。狭い部屋で使う場合もこまめに換気する。
(8)ストーブの近くで使用しない
ガスボンベを暖房機のそばや、使用中のキッチンコンロの近く・上など、高温になる場所に置かない。
ボンベが過熱され、爆発などのおそれがある。
(9)ガスボンベを40度以上になる車内等に置かない
ボンベは直射日光の当たる車内など高温になる場所には置かない。ボンベが過熱し、爆発することがある。
(10)家具、壁、カーテンなどから15cm以上離して使用する
カセットコンロの周囲に家具や壁、カーテンなどの可燃物のようなものから15cm以上離して使う。
可燃物に引火したり、ガスボンベが過熱し爆発することがある。
参考:
NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構) 「使い方を誤ると破裂のおそれ~鍋の季節はカセットボンベの事故に注意~」
産業保安ポータルサイト「さんぽのひろば」
カセットコンロ・ガスボンベを購入する際のポイント
①備蓄としてボンベは何本必要?
ガスボンベの備蓄量の目安は備蓄食料と同じで、7日分が推奨されています。
それでは、1日あたりどれくらい使うのでしょうか。
例えば、お湯を沸かすことが主である場合と、朝昼晩3食で米を炊いたり麺料理を作ったりする場合と、どちらがたくさん使うでしょうか。それは後者ですよね。また、夏か冬かでも使用量が異なります。
一般的には、ガスボンベは「1日1本」が推奨されていますが、実際に朝昼晩と使うとなると、1日1本では若干足りないと個人的には感じています。
よって、「1日2本」×7日間分、つまり計14本は備えておくと安心と言えます。
②保管場所や使用期限の注意点
カセットコンロとガスボンベには、ガス漏れを防ぐゴム部品が使用されています。使用の頻度に関わらず、経年劣化するため注意が必要です。
購入したけど家の奥深くで眠っている・・・など、日常的に使っていない方は、いつ製造されたものか確認が必要です。
災害が発生してから、または天気予報で「来週台風が来ます」と言われてからでは、お店の在庫はすぐ売り切れてしまいます。平時から意識して、確認・購入しておきましょう。
カセットコンロ | 製造から10年を目安に買い替えの検討がおすすめです |
ガスボンベ | 製造から約7年以内を目安に使い切りましょう |
③コンロ以外にも使える!寒さ対策に
ここまでは、料理やお湯をわかすことを目的としてカセットコンロをメインに説明してきましたが、実はカセットボンベは他の用途にも使えます。
寒さ対策です。カセットガスストーブをご存知でしょうか。
電気ストーブや石油ストーブではなく、ガスボンベをセットして使える暖房器具です。
防災対策として、ひとつ準備してはいかがでしょうか。
まとめ
「カセットコンロは防災グッズに必要?」という問いに対して、個人的にカセットコンロを準備しておくことを強く推奨します。
大災害が発生すると、電気、水道、ガスといったライフラインは、大災害発生直後は停止し利用できなくなります。
平時から使い慣れておき、いざというときにも使えるようにしておきたいですね。
(りんごママ)