防災備蓄としてあげられる代表例が、長期保存水。
一般的なペットボトル水に比べて、賞味期限が5年~10年と長い期間保存することができます。一方で、「1本あたりの単価が高い」「買ってみたけど飲んだことがない」「一度も開けずに賞味期限が来てしまった」という人も多く、賞味期限がきたからもったいないけど破棄した…という人もいるのではないでしょうか。
その中でも、「長期保存の水は体に悪いのか?」と心配している人もいると思います。
この記事を読むと以下のことがわかります。
この記事でわかること
・長期保存水は体に悪いのか
・長期保存水は賞味期限が過ぎても飲めるのか
・賞味期限が過ぎても飲める理由
目次
長期保存水は体に悪いのか?
長期保存できるゆえ、中に保存料や添加物がはいっているのでは?と思ったことがある人もいるかもしれません。
結論をいうと、長期保存水に保存料や添加物などははいっておらず、一般的なペットボトル水と中身は同じです。
ペットボトル容器に厚みがあり、蒸発・匂い移りしないよう特徴が違うことで、このように長期間保存ができるようになっています。
詳しく説明を見ていきましょう。
長期保存水は賞味期限が過ぎても飲めるのか
賞味期限が切れた水は飲めなくなってしまうのでしょうか。
結論からいうと、賞味期限が切れても飲めます。
賞味期限は美味しく飲める期間ですので、期限切れでも問題ありません。開封していない状態で、かつ適切に保存していれば、中身が傷む事はなく飲むことができます。
他の食品や飲料と同じように味が落ちたり、中身が腐ったりといったことは基本的にありません。
水は開封しない限り、問題なく飲めるということは覚えておくと良いですね。
では、なぜ飲むことができるのでしょうか。
賞味期限が過ぎても飲める理由
(1)長期保存のペットボトル容器に秘密がある
そもそもなぜ、長期保存水は普通のペットボトル水と異なり、5年~10年と保存できるのでしょうか。
その理由はペットボトル容器にあります。通常のペットボトルより厚く作られているからです。
ペットボトルが厚いと「内部の水の蒸発」「外部の匂い移り」の長期的な防止に繋がります。
(2)なぜ腐らないのに水に賞味期限があるのか
なぜ腐らないのに賞味期限があるのでしょうか?これは、先述した「内部の水の蒸発防止」と「におい移り防止」と関係があります。
①内容量が減るから
一般的なペットボトルには非常に小さな穴があり、通気性のある容器なので、時間が経過するとともに少しずつ水分が蒸発して内容量が少なくなることがあります。そうすると、表面に記載されている内容量と中身の量が合わなくなります。この結果、計量法という法律に抵触し、法律違反となってしまうため問題が起こる可能性があります。
一方で長期保存水は、この穴が非常に少なく、長期間保存してもほとんど水が蒸発しにくい材質・厚みのペットボトル容器が用いられています。ですが、長期保存水であっても、一定の賞味期限を設けることで、問題なく保管できる期間を定めています。
②匂いうつりするから
通常のペットボトルは通気性のある容器なので、においの強いものと一緒に保存しているとボトル本体や蓋ににおいが移ってしまうことがあります。場合によってはペットボトル内の水にまでにおいが移ることもあります。よって、できるだけにおいのない状態で飲んでもらえるように賞味期限が設定されています。
これに対して、長期保存水用のペットボトル容器は、におい移りのしにくいものが使われています。ですが、匂いの強い洗剤などの近くで保管をしておくと、その限りではないため、保存方法にも気をつけましょう。
(3)水は腐らないため、「消費期限」ではなく「賞味期限」が設けられている
ペットボトル水に設けられているのは、「賞味期限」です。賞味期限は、「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」となっています。
「消費期限」と「賞味期限」には明確な違いがあります。
消費期限・・・袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、この「年月日」まで、「安全に食べられる期限」のこと。お弁当、サンドイッチ、生めん、ケーキなど、いたみやすい食品に表示されています。
賞味期限・・・袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、この「年月日」まで、「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」のこと。スナック菓子、カップめん、チーズ、かんづめ、ペットボトル飲料など、消費期限に比べ、いたみにくい食品に表示されています
(4)ろ過や加熱処理をして徹底的に雑菌などを取り除いている
基本的にろ過や加熱処理をして徹底的に雑菌などを取り除いています。開封後に雑菌が入りこめば水の品質は落ちるものの、雑菌が存在しない未開封の水が劣化することはありません。
そのため水は、賞味期限が切れても飲料が可能なのです。基本的に未開封の状態で高温多湿の場所を避けて保管していれば、何年でも水は持ちます。
飲むことをためらう時はどうする?活用方法と注意点
ポイント
(1)沸騰させてから使う、調理に使う、歯磨きに使う
(2)生活用水として、手を洗う、洗濯、食器を洗う時などに使う
(3)赤ちゃんに与えるときは、賞味期限内の「純水」にする
(4)開封後はすぐに飲み切る
(5)日頃の保存方法に気を付ける
(1)沸騰させてから使う、調理に使う、歯磨きに使う
飲水にすることにためらいがある場合は、以下の方法で活用できます。
・沸騰させてから飲む
・調理用に使う
・歯磨きに使う
・沸騰させてから飲む
期限切れのペットボトル水をそのまま飲むのに抵抗がある人は、鍋とカセットコンロで水を沸騰させてから飲む方法もあります。
非常時には、生活用水も飲料水も貴重な存在です。
断水、停電やガス停止した中では、沸騰させるにも手段に限りがあります。
カセットコンロ、ガスボンベも備蓄として常備しておけば、鍋で沸騰させ、麦茶等を入れるポットなどにいれて飲料水として使えます。開封後は、すぐに飲み切りましょう。
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・調理用に使う
災害時には、水が大変貴重です。期限が過ぎた水も、沸騰させてラーメンやアルファ米などに使ったり、レトルトパウチを温めたり、ポリ袋調理でごはんやカレーを作ったりすることができます。
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・歯磨きに使う
災害時は、つい口内環境衛生が後回しになりがちです。ですが、口内環境の悪化が思わぬ病気につながり、災害時に体調を崩す原因にもなります。
平時、なにも不自由なく暮らしているなかでは、水をじゃぶじゃぶ使いがちですが、災害時には歯磨きのうがいに使う水も大変貴重です。賞味期限が過ぎた保存水を、うがいに使うこともひとつのアイディアです。
(2)生活用水として、手を洗う、洗濯、食器を洗う時などに使う。
災害時は断水で水が大変貴重になります。
飲み水はもちろんですが、忘れがちなのが生活用水としての準備。
手を洗う、食器を洗う、洗濯、顔を洗うなど…。飲み水分だけを考えていると、生活用水分がなくて慌てることに。
給水タンクに入っている水。タンクにコックがついていれば、一定量ずつ出すことができますが、貴重な水をもっと少しずつ使いたい場合は、ペットボトルで一工夫すると使いやすくなります。
ペットボトルのキャップに小さな穴をあけたり、キャンプなどでも使われるジャグがあると、ちょろちょろと少しずつ使うのに便利です。
(3)赤ちゃんに与えるときは、賞味期限内の「純水」にする
ここからは注意点です。
赤ちゃんがいる家庭は注目のこの点。
赤ちゃんには、「賞味期限内」の「純水」を防災用に準備しておきましょう。
ベビー用品コーナーにある赤ちゃん用のペットボトル水がその例。
赤ちゃん期は1~2年と考えて、わざわざ長期保存5~10年の水ではなく、こういったベビー用品売り場で買えるペットボトル水を、「持ち出し用リュック」(1~2日分)そして「在宅避難用備蓄」(1週間分)用意しておくのがおススメです。
(4)開封後はすぐに飲み切る
ふだんの生活におけるペットボトル飲料の扱いとも同じですが、開封後はできるだけすぐに飲み切りましょう。
例えば、ペットボトルの水に直接口を付けて飲んだ場合、口の中の菌がペットボトルの中に侵入して雑菌が繁殖します。そのまま置いておくと、カビが発生してしまうこともあるため、口を付けた水はすぐに飲み切るように心がけましょう。
(5)日頃の保存方法に気を付ける
長期保存水は賞味期限が切れても飲んだり生活用水として使うことができますが、保存方法には注意すべき点があります。
備蓄した水を保存する際の5つのポイント
ポイント
(1)保管場所を分散する
(2)直射日光を避ける
(3)定期的に賞味期限を確認する
(4)段ボールから出して保管する
(5)最低3日分の水を確保しておく
(1)保管場所を分散する
地震や水害により、自宅が倒壊したり、1階フロアが浸水する可能性もあります。1箇所にまとめて保管すると、そこから備蓄品が取り出せなかったり、備蓄食料などが水につかってしまうおそれがあります。万が一、そのような状況になったとしても備蓄品を取り出せるように保管場所を分けておくことで、リスクを分散させましょう。
家の中で備蓄品を保管するのに適しているのは玄関周辺です。玄関周辺と併せてキッチンや寝室、廊下収納、パントリーなどに分散しておくことで、備蓄品をいずれの場所から持ち出すことができるでしょう。
(2)直射日光を避ける
水を備蓄する場合、直射日光があたる場所を避けるようにしましょう。未開封のペットボトル水であっても、直射日光の差す場所で長時間保管すると品質が落ちてしまいます。
また高温多湿の場所もカビや雑菌が増えやすいため、衛生状態を維持したい備蓄水の保管には向きません。
(3)定期的に賞味期限を確認する
定期的に水の賞味期限を確認しておくことも大切です。賞味期限が少し過ぎたくらいでは、品質が大きく劣化することはあまりありません。しかし、被災したときに「備えていた水の賞味期限が過ぎていた」というような事態は避けたいものです。
定期的に賞味期限を確認し、期限が近い水から使うようにしましょう。また、使用した分を補充するように心がけると無駄にすることなく備蓄できます。
もしも賞味期限が過ぎていた場合も、一般的には問題なく飲める言われていますし、どうしても気になる方は、手洗いや食器洗いなどの生活用水に使用しましょう。
(4)段ボールから出して保管する
まとめ買いした際の段ボールから出して保管することをおすすめします。
ダンボールの保管方法や保管場所によっては、ゴキブリが好む環境の特徴と一致しやすくなります。
ダンボールは波打った構造と材質により保温性があります。ダンボールを押し入れや部屋の隅に保管しておくと、暗く・狭い環境ができ、ゴキブリにとって非常に快適な環境となります。
さらに、ダンボールの接着剤には「コーンスターチ」というデンプンが使用されていて、ゴキブリのエサとなりえます。
これらを理由に、長期保存のペットボトル水は段ボールから出して保管するようにしましょう。
(5)最低3日分の水を確保しておく
最低でも3日分の水と食料品、そしてトイレ凝固剤を確保することは、とても重要です。災害時には、電気や水道、ガスなどのライフラインが使用できないことが想定されます。
1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災では、電気→水道→ガスの順番で復旧しました。特にガスは、阪神大震災では61日、東日本大震災では34日かかったと言われています。
さらに、首都直下地震等による東京の被害想定によると、各ライフラインの復旧日数の目安は、電気で3日、上水道で6日(下水道はそれ以上かかる)、ガス(都市ガス)で60日となっています。
飲み水を確保できないうえに、火を使えなければ食事を作ることもできません。可能であれば、ゆとりを持って1週間程度の水・食料・トイレを備蓄できていれば、より安心感が高まるでしょう。
参照:NHK防災・復興 明日をまもるナビ「首都直下地震 復旧にかかる日数は?」
備蓄品はこれが必要(知る防災) - 日本気象協会 tenki.jp
備蓄に必要な水の量は?
(1)飲料用・調理用に1人あたり1日3リットル必要
(2)生活用水も必要
まず基本的な考え方として、備蓄水(保存水)は、「飲用・調理用」と、トイレや洗い物などに使う「生活用水」に分けます。
また、災害時用の水は、最低でも3日分の備蓄が望ましいとされています。1人1日3L×3日分で、1人あたり9Lの飲料水を用意しておくとよいでしょう。
(1)飲料用・調理用に1人あたり1日3リットル必要
飲料水・調理用の水は、1日につき1人あたり3L程度あると安心です。
農林水産省の「緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド」でも、直接飲用する水は1人あたり1日1L必要で、残りは飲用水以外で調理などに使用する水も含めると、3Lほど用意することを推奨しています。
これを、最低でも3日間分。できれば1週間分備えると良いでしょう。
なお、ここで説明している水とは、非常時に持ち出す「防災リュック」に入れる分ではなく、家の安全が確保された上で在宅避難をする際の「在宅備蓄」用の水として捉えましょう。
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1人1日3リットルの飲用水・調理用水を、家族の人数分準備が必要です。
ただし、これらの量を一気に購入すると、賞味期限がくるのも一斉にやってきます。コツコツと少しずつ備蓄量を増やしていくことがおすすめです。
(2)生活用水も必要
手を洗う、食器類の洗浄、洗濯などに使う生活用水は、1日につき1人あたり10~20L必要と言われています。これは最低限の生活水準を維持するために必要とされている水量です。
大規模な災害発生時、生活用水の給水は災害発生から1週間~10日程度を目途に行われる目標と一般的に言われているため、すぐに生活用水が得られるとは限りません。そのため、飲料水とは別に生活用水も準備する必要があります。
例えば、普段から空の清潔なペットボトルなどに水道水を詰めておいたり、ふろの残り湯をすぐに流さない習慣をつけ、できる限り水を貯めるようにしましょう。
(※トイレについて:断水時は下水道の配管が損傷している恐れがあるので、基本的にトイレに水を流さないようにしましょう!)
まとめ
いつ発生するか分からない自然災害。
長期保存水は体に悪いのではと心配な人、家族の防災備蓄として長期保存水を準備している人、そして賞味期限が切れてしまい捨てようか迷っている人にとって、少しでも防災ヒントになれば幸いです。
(りんごママ)